第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
そしてこの二人、内緒話をする様に話しているのかと思いきや、割と普通のトーンで話しているため会話が全て丸聞こえ。
『芸能人?』
『違うんじゃない?テレビで見たことないよ。てか隣の人彼女かな』
『でも真ん中に子どもいるよ?』
『てことはあれ奥さん⁉︎羨ましいー!』
何やら非常に照れくさいのですが。
隣の宇髄さんは特に気にする風でもなく。
私の髪を指先に絡めくるくるして遊んでいる。
聞こえてなかったのかな。
と思っていたら、
「俺らちゃんと夫婦に見えてんのな」
なんて言い放った。
聞こえてたんですか!
しかもすっごく上機嫌!
まぁ、私も人のこと言えないかな。
だって、宇髄さんと夫婦に見えるのは私も嬉しい。
…まだ本物の夫婦ではないけれど。
それに、誰もが振り向くようなこんな素敵な人が自分の旦那様になってくれるなんて、まるで夢の様…。
ちょっとした優越感まで抱いてしまう。
またもやニヤけてしまいそうになるのをぐっと堪えると、
「なぁ、ちょっと聞きてぇことあんだけど」
「聞きたいことですか?」
急になんだろうと私は宇髄さんの方を振り向いた。
「いつ出したい?」
「何をですか?」
「婚姻届」
「………こっ…!」
え、今⁈
ここで決めるの⁈
突然の普段聞き慣れない単語に、私は驚きのあまり声も出せず、心の中で大パニックを起こしていた。
「んな驚くなって。結婚するんだろ?俺達」
そう言われましても…。
結婚てそう何度もするもんじゃないし、人生において一大イベントみたいなものじゃないかと思うし。
そう考えると、やっぱり意識しちゃうもん。