第9章 あなたの愛に包まれて*後編 上* 宇髄天元
そんなことを考えていたら、奏真を挟んで隣からくつくつと笑い声が。
「なーにニヤけてんの」
「え“っ⁈やだ!変な顔でしたよねっ、すいません!」
妄想を暴走させてニヤけるなんて、何やってるの私…。
穴があったら入りたい。
でも穴がない。
猛烈な勢いで恥ずかしくなった私は、赤くなったであろうその顔を、仕方なく両手で覆い隠した。
「おいこら隠すな」
「えー…、でも変な顔…」
そう言って渋る私の両手をベリっと剥がす宇髄さん。
「変じゃねぇ。かわい」
「っ…」
宇髄さんはいつも私を『可愛い可愛い』と言ってくれるけれど、私のどこをどう見たらそう思えるのか、さっぱり分からない。
けれど、彼がそう思っていてくれるのだと思ったら、『可愛い』と言ってくれる度に、私は舞い上がりそうなほど嬉しくなってしまうのだ。
単純だなぁ私。
ところで、隠すものを奪われどこへ視線を移せばいいのやら。
何気なく彼の方へと動かしてみれば、そこには私を愛おしげに見つめる優しい宇髄さんの笑顔。
この顔を見ると、温かく包まれているようでいつもほっとするのだ。
宇髄さんの微笑みに釣られ、私も微笑み返す。
なんだか甘い空気が流れる中、
『すいませーん、シート倒してもいいですか?』
この空気をぶった切るかのように、前の座席から声が掛かった。
「ん?あぁ、どーぞ」
『ありがとうございまーす』
スーッとシートが倒され、暫くすると…
『ねぇヤバイよ!後ろの人めっちゃかっこいいんだけど!』
『後ろの人?…ホントだ!めっちゃかっこいい!何あれ⁉︎』
シートを倒した子とその隣の子が何やらはしゃぎ始める。
大学生なのかな。
女の子の二人旅?
仲良しさんなんだなぁ。