第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
紗夜のアパートに着くと、チャイムは不要かとそのまま鳴らさずに家の中へ。
一旦荷物をリビングへおろすと、二人の様子が気になる俺は、荷物の整理もそこそこに奏真の部屋へと足を運ぶ。
寝てる…よな?
極力音を立てないようにそぉっ…とドアを開け、中の様子を伺うと…。
…そう来たか。
奏真はガッツリ眠ってる。
よしよし、いい子だ。
問題は紗夜の方で…。
寝てろと言って出かけたが、やっぱり奏真が気になったのかベッドに凭れ、様子を見てるうちに眠くなってしまったのだろう。
そのまま自分の腕を枕にして眠っていた。
寝てる、はいいが…
この体勢じゃ体が休まらねぇだろ。
ちゃんと布団に寝かせてやろうと、起こさないようになるべくゆっくりと動かし紗夜を横たわらせる。
が、眠りが浅かったらしい。
「…んー…、ん?…あれぇ…?」
体勢が変わった違和感からか、結局紗夜は目を覚ましてしまった。
「悪ぃ、起こしちまったな」
「あ…いえ…、すみません。私、奏真見ながら眠っちゃって…。おかえりなさい、宇髄さん」
「ん、ただいま」
そのまま紗夜の額にキスを落とす。
それだけで嬉しそうに微笑む紗夜をよく見れば…。
火照った身体に上気した顔
俺を見つめる潤んだ瞳
それはまるで情交を思わせるような…
…。
待て待て待て。
何考えてんだ俺は。
煽られてんじゃねぇよ。
相手は病人、理性を保て。
邪念を捨てるべく一呼吸置き、改めておでこに触り熱を確認する。
「やっぱ熱高ぇな。身体熱いのと寒いの、どっち?」
「ん…、熱いです…」
「じゃあいいモン持ってきてやるから待ってろな?」
紗夜がコクンと頷くのを確認し、一旦部屋を出てリビングへ向かう。
さっきそこに置いた袋から“いいモン“を取り出すと、それを持ってまた紗夜達のいる部屋へと戻った。