第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
そういや今何時だァ、と不死川がスマホを取り出し時刻を確認する。
俺も一緒に覗き込むと、ここへ来てから意外と時間が経っていたことに気付かされた。
「ヤベェ、そろそろ帰らねェと」
「俺も帰るわ。悪ぃな不死川、色々と」
「別に、大した事じゃねェ。じゃ、彼女と子供、お大事になァ」
不死川が俺に背を向け歩き出すのを見届けると、俺も不死川と反対に向かって一歩踏み出した。
その時、
「オイ、宇髄ィ!」
呼ばれて振り返れば、もうすでに数メートル離れていた不死川。
普通の会話では声が届かず少し大きな声を出すことになった。
「なにー⁉︎」
「明日熱下がらねェようなら病院行けェ!その間子供の方は俺が見ててやる!」
マジかよと一瞬ビビるが、ああ見えて不死川、7人兄弟の長男。
下の兄弟達の面倒をよく見ていた。
子供の扱いにはきっとなれてるだろう。
その申し出、ありがてぇ。
「助かる!そん時は呼ぶわ!」
俺がそう返事をすると、不死川は右手を軽く上げ、今度こそ本当に帰って行った。
いやホント、頼りになるわ、不死川。
この日、俺の中の不死川の株が爆上がりしたのは言うまでもない。