第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
「紗夜?」
「宇髄さん、ごめんなさい…」
「なんだよ、どうした?」
もう謝ることなんかないだろう?
そう思うのに、俯いた紗夜はひどく申し訳なさそうに話出す。
「館長に内緒にして欲しいって言ったくせに、私本当は後悔してたんです。奏真の看病しながら、急変したらどうしようとか考えちゃって…、でもこの子の親は私なんだから私が頑張らなきゃって思うのに、心のどこかで…今、いてくれたらいいのにって思ってました」
下を向いている紗夜の顔は見えない。
だが紗夜の声は心なしか震えていた。
「心細くて…、……頼りたかった…」
「紗夜…」
初めて聞く紗夜の本音。
ずっと、我慢してたんだよな。
一人で子育てをするということの不安、寂しさを。
お前が望むなら、いや、例え望まなくても…
俺はお前の背負ってるモン全部、丸ごと受け止める覚悟だよ。
だから…
「なぁ、聞いてもいいか?」
「…はい」
「お前の言う…いて欲しい、頼りたいっての、…それ、誰でもいいわけ?」
すげー嫌な聞き方。
分かってる、でも聞きてぇんだよ。
お前の口から直接。
言ってくれ、俺の名前を……
「違うの…、誰でも良くないっ…」
紗夜は大きくかぶりを振って俺を見上げた。
溢れそうな涙を必死で堪えながら。
「……宇髄さんがいいっ……!」
「っ…… 紗夜!」
縋るように叫んだ紗夜を、俺は堪らず掻き抱いた。