第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
リビングに入り、思わずフゥ…とため息が出る。
あの一時間で疲労困憊。
子供に薬飲ませんのって大変なんだな…。
「宇髄さん手伝わせてごめんなさい。疲れましたよね…」
「いや、初めてでちょっと戸惑っただけだ。…いつも頑張ってんだな」
俺がそう言うと、
「子供のためなら、頑張れます」
紗夜は晴れやかに笑った。
母親ってのは逞しいな。
偉いな、と俺がポンと頭を撫でてやると、今度は恥ずかしそうに顔をぽっと赤らめる。
またそんな可愛い顔しやがって。
あぁー、俺今日持つか?
マジで頼む、俺の理性…。
夕飯はもう遅い時間だからと簡単に済ませようということになった。
「パスタでいいですか?」
「あぁいいよ、何でも」
「ソースは…あ、これしか無い」
紗夜が手に取ったのは、市販のカルボナーラ一人前がニ袋。
……。
「なぁ、たまごある?」
「はい、あります」
「ベーコンは?」
「昨日使った残りが少し」
「ん、充分。オリーブオイルとニンニクとかブラックペッパーなんてあったりする?」
「?…オリーブオイルとブラックペッパーはここに。ニンニクはチューブで良ければ…」
「おー上出来上出来。んじゃ、俺パスタ担当〜」
「………ぇえっ!」
紗夜は俺が何をしようとしているか分かったらしい。
そう、俺は今からこれをアレンジするつもりだ。
ただかけるだけじゃ、味気ねぇだろ?
「宇髄さんは座っててください!私がぁっ」と慌てる紗夜に「俺をお客様扱いすんじゃねぇ!」とピシャリと言い放つ。
ぷーっと頬を膨らませるも、「じゃあ…」と紗夜は渋々といった顔でサラダを用意し始めた。
そんな紗夜に俺は目元を和らげる。
一日中子供の看病してたんだ。
きっと疲れてるだろう。
だから、これくらい俺にやらせてくれ。