第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
「コホン…あー、それで?俺が帰っちまったらママが寂しがるからいて欲しいってわけか?」
「うん!」
奏真、お前母親のために…。
いい子だな。ジンときちまうわ。
「よし、んじゃ泊まってもいいかママに交渉だな」
「おとまり!わーい!」
「まだ聞いてねぇぞー」
ーガチャ
「なんだか賑やかだねぇ」
ちょうどその時紗夜がお粥を持って部屋に戻ってきた。
ベッドのそばに小さな机を出し、テキパキと食べる準備を整える。
「さぁ奏真、食べてもっと元気になろうか。宇髄さんすみません。私何もお出ししてなくて…」
そういうと運んできた木製のトレーから、お粥とプリン、俺のために入れてきたのだろうコーヒーを机の上にコトリと置いた。
「ありがとな」
「いいえ」
紗夜はにこっと笑った。
「ねぇママー」
「ん?なぁに?」
「てんげんおにいちゃんおとまりしていいー?」
「お、お泊まり⁈…んん〜、でも宇髄さん忙しいかもしれないよ?明日予定があるかもしれないし」
「いや、俺明日は一日空いたんだ」
「……は‼︎すみません‼︎」
思い出したな。
そう、明日の予定、無くなってんのよ。
紗夜は青ざめ勢い良く頭を下げた。
そこまでしなくていいんだけどな。
「だから俺はどっちでも構わねぇよ?いて欲しけりゃ泊まるし、遠慮した方が良けりゃあすぐ帰るから」
「決めてくれていい」と言うと、「私が決めるんですか⁈」と激しく狼狽える。
自分が決めていいのか、迷ってんのか。
そんじゃ、これならどうだ?
「ここはお前ン家だろ?決定権は家主様にある!」
それっぽいことを言ってみた。
「はっ!そうですね、分かりました!」
……信じた。