第8章 あなたの愛に包まれて*中編 下* 宇髄天元
いつもの紗夜ならあんなんでも「はい」とか「分りました」とか、何かしら返してくれんだ。
今日来た最初のメールもなんだかカタイというか、事務的な、よそよそしさを感じるような文面だった。
おかしい、どうしたんだ?
気になって仕方がなくなった俺は、メールは諦め電話をかけることにした。
……ダメだ、出ねぇ。
あぁ、勤務中なら出れねぇか。
あ“ー、どうすりゃいいんだ!
どうにもならなくなりイライラし出す俺。
その時ふと思い出す。
そういや今日は紗夜のいる美術館の館長と、来月の高校生の絵の展示会の打ち合わせの日だ。
なんだ、その時会えるじゃねぇか。
絶望的状況から脱却でき、ほっと胸を撫で下ろす。
時刻を確認すると、4時を過ぎたところだった。
打ち合わせは5時だが、今から行ったって問題はないだろう。
休み明けの授業の準備を放置することになるが……
今は紗夜の方を優先したい。
よし、行くか。
居ても立っても居られない俺は、荷物を纏め足早にキメツ学園を後にした。
美術館へ到着すると、真っ先に向かったのは受付。
気持ちばかりが急いて少し小走りになりながらカウンターまで来ると、俺はハッとした。
ーーーいなかったのだ。
ここでいつも、笑顔で俺を迎えてくれる愛しい子が…