第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
と、ここでふと疑問が湧く。
遠出したこと無いって言ってたが……
前の旦那ん時はどうだったんだろうか。
そん時も、行かなかったのか?
いつ別れたのかは知らねぇが、さすがに全くってことはないだろう。
なら、そん時行った所とは別にした方が……
なんてウダウダ考え始めたが、辞めた。
そんな小せぇこと気にするよりも、コイツらが今行きてぇトコに連れてってやるのが一番だろ。
過去よりも今を大切にしたい。
もし行き先が同じだったんならそん時ゃ俺がもっといい思い出に変えてやる。
今までで一番最高だって思えるくらいの、とびきりのヤツにな。
「心配すんな。俺がちゃんと連れてってやるし、一緒に奏真のことも見てやる。一人じゃないからな」
ぽんと頭を撫でてやると、紗夜は目に涙を浮かべ俺を見上げる。
「一人じゃ、ない?」
「一人じゃねぇよ、俺がいるから」
優しくそう言ってやると、紗夜の目から溜まった涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
「どうした?」
「ごめんなさい…なんか、っうれし…」
一人じゃなくて嬉しいと、涙を流す紗夜。
ずっと一人で頑張って来たんだよな。
こんな事で泣くほど喜んでくれるのなら、いつだってすぐにでもすっ飛んで来てやるよ。
「ん、嬉しいのな」
ゴシゴシと目を擦る紗夜の手を掴み「目ぇ痛くなるぞ」とそっと外すと、流れる涙を指で優しく拭ってやった。
「宇髄さん、ありがとうございます」
紗夜は目を細め、柔らかく微笑む。
やっぱ、そっちのがいいな。
「そうやって、笑ってろよ」
「え?」
「お前の笑ってる顔、好きなんだよ」
「……すっ⁈」
冗談じゃねぇ、俺は大真面目よ?
素直に思ってることを言ってやれば、今度は頬がぽっと赤くなる。
泣いたり笑ったり赤くなったり、今日は大忙しだな。
そんな色んな表情を見せてくれる紗夜が、愛しくて堪らねぇ。