第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
今後の予定を立てながら、家までの道のりをとぼとぼと歩く。
抱き直したり今歩いていたりと大分揺られている筈だが、奏真は全く起きる気配はない。
子供って皆こんな感じなのか?
スゲェな。
そういえば、辺りを照らす月明かりがいつもより明るい気がする。
そう思ってふと見上げれば、今夜は綺麗な満月だった。
「わぁ、まん丸ですね!」
「おー、でっけぇなぁ」
「綺麗…」
夜空を見上げ、紗夜がそっと呟く。
俺は、満月よりも…
淡い月の光を浴びる紗夜の横顔の方が、ずっと綺麗だと思った。
「さて、どーすっかねぇ。行くなら行ったこと無いようなトコがいいよな?」
「宇髄さん…、実は…」
なんだ、どしたよ。
紗夜は神妙な面持ちで話し始める。
「奏真を連れて、遠出をしたことが……無いんです」
おぉ、マジか。
…まさかとは思うが、俺は一つ不安に思っていることを訊いてみる。
「もしかして、遠出キライ?」
「いえ、そんなことは!むしろ好きです!学生の頃はよく海とか行ったりしてましたし」
「なら良かったわ」
もしかして無理強いさせてるかと心配したが、そんなことは無く一安心だ。
「もし迷子になっちゃったらって思うと、怖くて連れて行けないんです。知らない土地でそうなっちゃうと、誰に助けを求めたらいいか分からなくなりそうで…。家の近くなら、そういう心配も幾らかはマシというか。
だからなかなか連れて行ってあげられないんです」
成る程なぁ。
確かに、目ぇ離したらすぐどっか行っちまうようなこんなチビ連れてなんて、一人じゃ不安だろうよ。