第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
「あ!ええと…みっ皆さんどんな所に出掛けるんでしょうね⁈あまり行ったことないから思い浮かばないなぁ!」
照れているのを誤魔化したいのか、若干大きめな声でぎこちなく喋り出す紗夜。
そんな所も可愛いのだが、その様子があまりにも必死で、可笑しくなって思わずプッと吹き出した。
「っはは!ま、そうだなぁ。俺もガキ連れてなんて初めてだわ。そういや不死川が…」
「しなずがわ?」
「あぁ、俺の同僚な。動物園とか遊園地はどうかって言ってたなぁ。定番っちゃ定番なんだけどよ」
「いいですね、楽しそう!」
「おぅ、後は…恐竜博物館とか?」
「恐竜博物館‼︎」
……。
スゲー食い付いた。
さっきの動物園、遊園地よりも、紗夜の目がキラキラしているように見える。
もしかして、こんな可愛い顔して恐竜がお好き?
「恐竜……好きなの?紗夜ちゃん」
「ハイ!あ、いえ!私じゃなくて奏真です!」
ほー、なるほど。
それなら納得。
やっぱ男の子だなぁ。
そういやこの前家に行った時、恐竜の人形が転がってた気ぃするわ。
「図鑑も持ってるんです。それ見ながら『おっきい恐竜見てみたいね』ってこの前話してたところで」
「んじゃ、そこにするか?」
「いいんですか⁈あ、でも奏真に聞いてからにしますね。違う所がいいって言ったらいけないし」
「ん、了解。二人でじっくり決めてくれ。俺がどこでも好きなトコ連れてってやっからよ」
任せろとニッと笑えば、紗夜もぱぁっと笑顔を見せた。
「んー…」
その時、気持ち良さそうに寝ていた奏真が俺の腕の中でモゾモゾと動き出す。
マズイ、さすがに起きちまったか?
すると、次の瞬間…
「とりけらとぷしゅ…」
一言。
それだけを発すると、また深い眠りの中へと誘われていった。
「「……」」
俺と紗夜は顔を見合わせ小さくぷっと吹き出した。
「じゃ、決まりだな」
「はい、お願いします!」
10月の3連休、そこで出かけよう。
新幹線に乗って、三人で。
きっと今までで一番楽しい旅になる。
心躍らせ約束を交わす俺達を、今夜も優しい月は静かに見守ってくれていた。
⭐︎中編下へ続く⭐︎