第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
「俺休もっかなー、学園祭」
「え?そういうのって休んでいいんですか?」
「いんじゃねーの?用事があれば」
「あぁ、そうですよね。あれ?別の用事あったんですか?」
「おお、今出来たんだけどな」
「今?」
「俺も奏真の運動会見に行く」
にこにこで言ってやるが、
「ダメですよ!」
全力でお断りされる。
ちぇー、結構本気だったのになぁ。
「なんでよ」
「だって、学園祭に先生いなかったら生徒さん達困っちゃいますよ」
「いや、大丈夫じゃね?ああいうのは生徒達で作るもんだし、何かあっても自分達でどうにかすんだろ。俺達教師はオマケなのよ」
と、いなくても問題ないのだとアピールしてみるが、
「それでもお仕事ですから。サボっちゃダメですよ!」
真面目なのね、紗夜ちゃん。
「分かりましたよー」と俺が若干不貞腐れてると、
「じゃあ…もし、来年は被らなかったら…
一緒に奏真の運動会、見に行きますか?」
少し勿体ぶるように紗夜が続けた言葉に、拗ねた俺の心が一瞬で晴れやかになった。
「いいの?俺、行っても」
「あ、被らなかったらですよ?来年は年長さんだし保育園の運動会最後なので、よかったら」
そう言って紗夜はにこっと笑った。
来年。
そうか、来年も一緒にこんな風にいてくれるつもりなのかと、俺は嬉しくなる。
その頃には俺達の仲も、もう少し進んでいるんだろうか。
そうだったらいいのにと、願わずにはいられない。
「お待たせしました!」
洗濯物はきっちり畳まれ持ってきた袋に納めてある。
帰る準備が出来たということか。
「よし、帰るか」
俺は立ち上がりながら奏真を抱き直し、紗夜と一緒にコインランドリーを後にした。