第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
やっと帰った…
男が出て行った出入り口から視線を紗夜に移すと、紗夜も同じように俺へと視線を移す。
「「あ。」」
ピタッと目が合うと、何故だか可笑しくなってきて、二人で一緒に吹き出した。
お幸せにって…
憎らしいなアイツ。
ただ、そのお幸せになりたいと思ってる自分もいて、なんだかなと思う。
「おはなしおわったー?」
静かにずっと待ってた奏真が遂に痺れを切らし、早く読めと足をバタバタさせ始めた。
「おぉ悪いな奏真。いい子で待ってて偉かったなぁ」
「お利口さんだったねぇ」
紗夜がよしよしと頭を撫でるとニコニコと笑う奏真。
しかしそろそろ限界か、もう待てないと今度は膝から落っこちないようにお腹の前に回していた俺の腕をぐいぐい揺すっている。
いくらいい子だってあんまり待たされちゃあ限界が来るよなぁ。
これ以上は可哀想だと思い、俺は絵本を開き直し、読む体勢に入った。
そういや、さっきっから右腕があったかいんだよなぁ…
そろっと視線を移してみると、そこに俺の腕にしっかりとくっ付いている紗夜がいた。
……。
「ん?……わぁ!ごめんなさい!」
自分が何をしてるかに気付いちまった紗夜は、慌てて俺の腕から離れていく。
さっきまでの温もりがなくなり寂しさを覚えた。
あーあ、そのままでいいってのに。
「別にそのままでもいいけど?」
と言ってはみるが、
「恥ずかしいので!」
真っ赤になった顔を隠しながら答えた。
あぁ素直。
ホント可愛いすぎ。
「どうぞ絵本読んでください…」
「っはは。ハイハイ」
照れる紗夜の頭をぽんと撫でてから、奏真がお待ちかねの絵本を読んでやる事にした。
今日の絵本は、天まで届く魔法の豆のお話……