第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
「お友達?」
「そうです!だから、その…お手伝いは、宇髄さんがやってくれます!」
ハッキリと“オトモダチ“と言われた俺。
そうか、友達か…
だがそれでいい、今は。
しかもただの友達じゃない。
“大切な“だ。
それで充分じゃないか。
目の前のこの男も多少驚いている。
よしよし、上出来だ。
あとはコイツが諦めてくれるかどうかだが…
「ふーん、そうなんだ」
チッ、ダメか。
すると今度は俺の膝の上で良い子で待ってる奏真に話しかけた。
「奏真くん、良い子で待ってて偉いね。そうだ、その絵本お兄さんが読んであげようか?」
紗夜がダメなら先ず奏真の方から取り入ろうって魂胆か。
粘るなコイツ…
そしてここで奏真に頷いて欲しくない。
頷かれて絵本でも読まれ始めたら、帰れと言いづらくなっちまう。
かと言ってまだ5歳の奏真に『コイツの話は全部断れ』なんて大人の事情を押し付けるわけにもいかねぇ。
この先どうなるかはもう奏真次第だ。
何て言うだろうな…
俺も紗夜も固唾を飲んで見守った。
「おにいちゃんがよむの?」
「うん、読んであげるよ。どうする?」
奏真は「うーん」と首を捻って考える。
たくさん考えて、遂に決まったのか奏真は大きな声でこう言った。
「やだ!」
「え!…どうして?」
「だっててんげんおにいちゃんの方がいいもん!」
……マジか!
子供は嘘つかねぇ。
って事は本心から言ってるって事だろ?
ヤベェ、これはマジで嬉しいわ。
俺は心の中でガッツポーズした。
男は目を丸くして驚いていたが、やがて諦めたのか吹き出して笑った。
「っははは!あーあ、負けました。やだって言われちゃしょうがないよね」
「そういう事だからよ、さっさと帰れほら」
俺はソイツを追い払うようにしっしっと手を振った。
「ちょっと君さ、いくらなんでもそれは失礼でしょ!しょうがないなぁ、じゃぁ帰るよ。またね、奏真くん」
ポンポンと奏真の頭を撫でると、紗夜にもにっこり微笑んだ。
「月城さんも、またね」
「あっ、はい!」
「一応君もね」
「分かったからさっさと行けよ」
「ハイハイ行きますよ」
男はフッと笑って出口へ向かい、出る直前にパッとこちらに振り向き、
「お幸せにー」
去り際にそんな事を言って、ソイツは爽やかに去って行った。