第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
「そんなに遠慮しないでよ。俺ならいくらでも使ってくれていいからさ?」
なんなんだコイツ…
紗夜が勇気を振り絞った拒絶も無駄に終わった。
全く効いてねぇ。
聞こえなかったわけじゃねぇだろうに、なんなんだこのしつこさは。
紗夜が嫌そうにしてんの分かんねぇのか?
いい加減腹が立ってきた俺は、もう我慢ならねぇと男に向かって文句を言ってやる。
「おい、聞こえなかったのか?結構だって言ってるだろ」
「あのさぁ、君には聞いて無いんだよねぇ?」
するとソイツは機嫌を損ねたのか、貼り付けたような笑顔で俺に突っかかって来た。
敵意剥き出しだ。
分かりヤス!
「さっきから気になってたんだけどさ、君は月城さんの何?彼氏なのかなぁ?」
「そういうわけじゃねぇが…」
あ、ヤベ!
嘘でもいいから彼氏だと言っとくべきだった。
何やってんだよ俺のバカ…
「へぇ、そうなんだ。じゃぁお友達か何か?」
「あぁ、そうだよ」
「本当かなぁ?」
俺がそう言うも疑ってかかるこの男。
彼氏ではないと分かったからか、さっきの不機嫌さはなくなり変わりに出てきたのは余裕の笑み。
どうやって俺達の間に割り込もうか考えてんだろう。
別に付き合ってるわけじゃないのだから、横取りしようが何も問題はねぇからな。
あ“あ"ーくそっ!いちいち苛つくなコイツ!
目の前の男に苛立ちを隠し切れないでいると、突然腕をきゅと締め付けられる。
ハッと隣を見やると、何を思ったか紗夜は俺の腕にぎゅうっとしがみ付いていた。
「宇髄さんは、私の……大切なお友達です!」
紗夜は、その男に向かってハッキリと言いきった。