第7章 あなたの愛に包まれて*中編 上* 宇髄天元
「今度からここ来る時は俺を呼べ」
離れてモヤモヤしてるより、一緒に来ちまった方が余計な心配をしなくて済む。
そしてなにより俺は紗夜といられる時間が増える。
いい事尽くしだ。
俺はそう思ったが、
「……ぇえ⁈」
紗夜は素っ頓狂な声を上げた。
あー、これは…
「お前また俺に悪いとか思ってるだろ」
「だって、毎回毎回私達のために宇髄さんの貴重なお時間を使わせるのは、申し訳ないので…」
前にも聞いたぞその台詞。
まぁ、そう思うのも無理ねぇわなぁ。
まだ俺の気持ちも何にも伝えてねぇし、紗夜が俺の事をどう認識してんのかもわからねぇ。
だがこの間、一緒に出かける事を承諾した。
少なくとも俺は紗夜にとって、“一緒にいてもいい、多少気の許せるやつ“ぐらいには思ってもらえてるんじゃねぇかと思ってる。
今日もこうして会ってるんだし、俺に遠慮なんかして欲しくねぇ。
それになぁ、
好きなやつのために時間を使えるなんて、俺にとっちゃあ嬉しい事以外のなんでもねぇんだよ。
「気ぃ使うなよ。俺がそうしてぇの」
そう言ってポンと紗夜の頭を撫でてやると、紗夜はふわりと微笑んだ。
「ふふ、はい。じゃぁ、一緒にお願いします」
あぁ…、俺こいつの笑った顔好きだわ。
飾りっ気がなくて、今まで一緒にいたどの女よりも、一番綺麗だと思った。
「ぼくのおようふくぐるぐるしてるー!」
スタートボタンを押してからずっと洗濯機に張り付いてた奏真がこちらを振り向く。
「おー、面白かったか?」
「うん!でもあきたー!」
そりゃな、こんなんずっと見てても面白くでもなんでもねぇ。
だが、暇潰すっつってもこんな所に子供が遊べるものなんて置いてるわけもなく…
いつもどうしてんだろうな。
「じゃぁ絵本でも読もうか。こっちおいで」
紗夜は奏真を長椅子の所まで連れて行くと、そこに数冊持ってきた絵本を広げた。
わぉ、用意周到なのね紗夜チャン。