第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
褒められながら頭を撫でてもらって、ちょっとこそばゆいけど嬉しい。
それに、「よくできました」ってほんとに先生みたいだなって思って思わず、
「先生みたい」
「いや、俺先生なんだわ」
そうでした。
こんなにかっこよくて素敵な先生が教えてくれるなんて、生徒さん達が羨ましい。
そういえば、スケッチブックに描いていた絵は、授業で使ったりするのかな?
「あぁ、これか?これは俺のただの趣味だよ」
「そうなんですか。さっきちょっと見させてもらって、凄く素敵だったので…その…」
「ん?」
「全部見たいので、暫くお借りしてもいいですか?」
全部見たいから貸してくれだなんて、なんて図々しいお願いだろう。
自分でもびっくりだ。
宇髄さんも目を丸くしていた。
何言ってんだコイツって、呆れてしまったかなぁ…
やっぱり遠慮しようと口を開きかけたその時、
「っはは!そんなん言われたの初めてだな」
良かった、笑ってる。
呆れてなかった事にホッとした。
「ほら」とスケッチブックを手渡され、「ありがとうございます」と受け取る。
「それ、欲しけりゃやるよ」
「え、いいんですか?」
「あぁ、いいぜ。そんなので良けりゃ、だけどな」
まさかもらえるなんて思ってもみなかった。
宇髄さんの描いた、あの素敵な絵がいつでも見られるなんて。
私は嬉しくて、もらったスケッチブックを両手でぎゅっと抱きしめた。
「嬉しい!大切にしますね!」
私がそう言うと、宇髄さんは凄くびっくりしていたけれど、その後とっても優しい笑みを返してくれた。