第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
「堅苦しいわ!頼むから普通に聞いてくんねぇ?」
「そ、そうですね!じゃあ、宇髄さんのお仕事が知りたいです!」
「仕事?気になる?」
「はい!」
「ふーん。じゃ、当ててみ?」
「ええっ、クイズですか?えっと…ジムのトレーナーさん?」
「ハズレー。てかなんでジムなのよ」
「今日いっぱい遊んでたし、体力ありそうなので!」
「まぁ、鍛えにジムは行くがなぁ。他は?」
他にって…何かヒントないかなぁ。
目の前の宇髄さんは頬杖をついてニコニコと此方を眺めているだけで…
私が首を捻って考えているのが面白いらしい…
人が一生懸命考えているのにと少し剥れそうになるけれど、楽しそうな笑顔を浮かべる宇髄さんに、ムッとした気持ちも萎んでいく。
ふと、宇髄さんの手元を見ると、頬杖をつく手と反対の手の動きが怪しい。
ずっと机をトントンしてる。
…違う、下を…指差してる?
下に何かあるの?
そう思って、私は机の下をパッと覗いてみた。
………あ!
「宇髄さん!やっぱり絵描きさんなんですか⁈」
机の下にあったのは、今日宇髄さんがずっと持ち歩いていた画材道具とスケッチブック。
もしかして、最初に考えてた私の感が当たってたのかと思って、思わず声を弾ませた。
「惜しいな!絵を描く事もあるが…それだけじゃない。
さて、なんでしょう?」
宇髄さんはさっきよりももっとニコニコとしていた。
よっぽど楽しいらしい。
なんだろう…絵をどうにかするの?
いよいよ分からなくなって、私は取り敢えず思い付くものを声に出してみる事にした。
数打ちゃ当たる…だろう!
「絵を…売る!」
「売らねぇ」
「あげる!」
「あげねぇ」
「配る!」
「あげるも配るも一緒じゃねぇの?」
「貼る!」
「貼るってなんだ…」
そろそろ降参か?と宇髄さんはくくっと笑う。
なんだか悔しくなってきて、こうなったら意地でも当ててやると私は頭をフル回転させる。
あと言ってないのは…
「絵を…教える?」
私がそう言うと、宇髄さんは目を見開いて驚いた。
「…合ってます?」
「あぁ、どこで教えてると思う?」
「どこで…学校かな。…中学校?」
「残念、もひとつ上だ」
ということは…
「宇髄さん、高校の美術の先生なんですね!」
宇髄さんは目を細め、「よくできました」と頭を撫でてくれた。
