第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
図書館から出て10分程歩き、私と奏真の暮らしているアパートに到着した。
「すみません宇髄さん、重かったですよね」
「子供1人くらいどうってことねぇよ」
あの後また絵本を読んでもらっている内に、気が付いたら奏真は眠ってしまったのだ。
起こすのは可哀想だ。
抱っこして帰ろうと思って、奏真の脇の下に手を入れ抱っこをする体勢に入ったら、
「俺が連れてく」と私の代わりに抱っこをしてくれた。
これは正直助かった。
5歳にもなると、10分でも抱っこし続けるのは腕がしんどくなってくる。
宇髄さんのお言葉に甘えて、ここはお願いする事にした。
「どうする?まだ寝かせとくか?」
「はい、もう少し寝かせます」
「はいよ、なら部屋まで運んでやるから玄関開けてくんね?」
「ありがとうございます。今開けますね。
……………。
あの…、ちょっ、ちょっとだけ待っててもらえますか⁈」
「あ?別に構わねぇよ?」
「すいません!では!」
私は急いで玄関を開け、ささっと中へ入った。
「なんだありゃ?」
私は物凄く焦っていた。
やばい、家の中大丈夫かな⁈
朝の時点でまさか人を家に入れる事になるなんて思ってもみなかったから、掃除をしてあったかどうか…
記憶が定かではない。
取り敢えず、玄関から奏真の部屋までの宇髄さんが通るであろう動線を辿り、人に見せられる状態か確認した。
……うん、これなら大丈夫。
掃除してから家出たんだ。
頑張ったな、朝の私。
「お待たせしましたー」と玄関を開けると、待っていてくれた宇髄さんは凄くニコニコしていた。
なんで?
「お、ちゃんと掃除してあったか?」
………。
バレてた!