第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
……読めない。
パラパラと他の所も捲ってみたけれど、全部『今は昔』から始まるヤツだ。
原文そのまま、しかも現代語訳が無いから何書いてあるか全然分かんない。
ちんぷんかんぷんだ。
あぁ、もうちょっとちゃんと国語の勉強しとけば良かったなぁ。
すると、辞書を捲っていた宇髄さんが私が見ていた本を覗き込んだ。
「何見てんだ?…それ分かんの?」
「いいえ、ちっとも!」
「っはは、俺も全っ然分かんねぇわ」
「昔国語で習ったけど、全然覚えてないです。これは古文って言うんでしたっけ?」
「ちょっと俺も覚えてねぇわ。
今度うちのがっ……」
「『うちのが』?」
「いや、これは後で話してやるよ。今はしばかり片付けるぞ」
「ねーねーわかったー?」
「おう、悪りぃな。ちょっと待ってろよ」
宇髄さんは、何を言いかけたんだろう。
気にはなるけど、後で教えてくれるみたいだし、今は私もどちらかと言うと、しばかりが知りたい。
暫くしたら、宇髄さんがパタンと本を閉じた。
「おし!大体分かったぜ」
「ほんとー?」
「あぁ、まず漢字が違う。こうな?」
宇髄さんは持ってたスケッチブックの空いてるページに、『芝』と『柴』を書いた。
「桃太郎のしばかりは右の『柴』だ」
「へぇー!」
「……?」
「漢字はまだ分かんねぇか」
「うん」
「もうちょっと大っきくなってからだね」
「じゃ、次な。この柴っつーのは、小さい雑木とか枝の事だ。山ん中にこういうのがそこら中落ちてるわけよ。でだな、桃太郎のじいさんが山ん中に入って何してたかっつーと…奏真分かるか?」
奏真は首を捻って一生懸命考える。
「えだを…ひろうの?」
「正解だぁ!やっぱお前は派手に賢いなぁ!」
宇髄さんは偉い偉いと奏真の頭をわしゃわしゃと豪快に撫でまくる。
髪をぐしゃぐしゃにされてる奏真は「キャハハッ」と喜んでいた。
そんなに騒いで大丈夫かな…
案の定、図書館の職員さんがツカツカとやってきて、
『もう少し静かにお願いします』
「すいません!」
やっぱり怒られてしまった。