第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
わぁ、凄い…!
それは水彩画で描かれた、風景画だった。
綺麗な小川が流れ、木々が青々と生い茂る。
隙間から差し込む木漏れ日に、見ているだけで暖かくなる。
ここに描かれている青い小鳥の囀りまで聴こえてきそうだ。
「素敵…」
思わずため息が出てしまう。
もう少し見たくなって、次のページをめくってみる。
静かな夜の海に浮かぶ一艘の小舟。
小舟を漕ぐ少年の頭上には満点の星空。
夜空に鏤められた星達が水面に浮かび、その光は宝石の様に美しく輝いている。
なんて綺麗な絵なんだろう…
さっきの絵もそうだけど、全体的に柔らかな印象で、色選びも心が落ち着く様な優しい色を使ってる。
絵の事はよく分からないけれど、絵を見てこんなに感銘を受けたのは初めてだった。
きっと、宇髄さんは凄く才能のある人なんだ。
まだ聞いていなかったけれど、宇髄さんは一体何者なんだろう。
やっぱり、絵描さんなのかなぁ?
気になってしょうがない。
よし、後で聞いてみよう。
ふと顔を上げると、サッカーに飽きてしまったのか、今度は2人で違う遊びを始めた。
プロレス?相撲?
突進してくる奏真を、宇髄さんが軽々と持ち上げポイっと芝生の上に投げ飛ばす。
何かツボにハマったのか、奏真は大爆笑しながら投げ飛ばされに何回も宇髄さんに突進していった。
今目の前で奏真を放り投げている宇髄さんが、こんなに素敵な絵を描く人だとは思わなかった。
いきなり今日1日遊んでやる!とか、突拍子もなく大胆な事を言うから、描く絵も豪快なのかなぁと思っていたけれど、それは私の全くの思い込みで…
今日も相変わらずパーカーだし、しのぶさんの言うチャラい?感じはするけれど、本当は、この絵みたいに素敵で優しい人なんじゃないかと思う。
でも、私はまだ何も知らない、宇髄さんの事。
どんなものが好きなの?
どんな時、嬉しいって思うの?
知りたい、あなたのこと。
そう思った。
その時、一瞬此方を振り向いた宇髄さん。
目が合うと、フッと微笑みまた遊び始めた。
不意に向けられた穏やかな微笑みに、思わずドキッとしてしまう。
顔中に熱が集まって、赤くなってるかもしれない頬を慌てて両手で隠した。
バレてない、かな?
今まで以上に私の心臓がドキドキしてる。
何これ、もう……ヤバイかも…
私、宇髄さんに…
恋、してる…
