第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
早く早く!と、奏真は急かす様に宇髄さんの手をグイグイと引っ張る。
「あぁっ、奏真!そんなに引っ張っちゃ…」
「おっと、元気いいなぁ!まぁちょっと待てな?
なぁ、月城さん」
「はい!」
「悪りぃんだけど、そこに置いてあるヤツちょっと見ててくんね?」
そこに置いてあるヤツ…というのは、ベンチに置いてあるこのスケッチブックとか、画材道具の事かな?
「お安い御用です!」
「ありがとな。気になりゃ中見てくれても構わねぇよ。んじゃぁ、よろしくな」
そう言うと、宇髄さんは奏真を連れて…じゃなくて、奏真に引っ張られて、少し離れた所で2人でサッカーを始めた。
「奏真!準備はいいか?いくぞー!」
ほらよっ、と宇髄さんがボールを蹴る。
強くなり過ぎないように加減をして蹴ったボールは、コロコロと真っ直ぐ奏真に向かって転がっていった。
「きゃはー!ボールきたー!」
奏真は自分に向かってボールが転がってきたことに大喜びだった。
「つぎぼくねー!」
「おぅ!派手に蹴り飛ばせ!」
えーいっ!と思いっきり蹴り飛ばしたボールはコロコロと転がり、そのボールを宇髄さんが足でちゃんと止めた。
「うわぁーい!」
宇髄さんが受け止めてくれたことが余程嬉しかったのか、奏真はぴょんぴょん飛び跳ね、全身でその喜びを表現していた。
ただボールを蹴り合っただけで、奏真のこの喜び様…
「ッハハ!おいおい月城さんよぉ。
お前どんだけ下手だったんだっつーの」
と、宇髄さんが呟いていたとはつゆ知らず…
奏真が大はしゃぎしている。
そっか、奏真はああいうのをやりたかったんだ。
成る程、サッカーとはああやってやるのねと、ベンチから2人の様子を眺めて勉強させてもらった。
あ、そういえば…
さっきよろしくと託された画材道具達。
宇髄さんはどんな絵を描くんだろう。
少し、気になってしまう。
見ていいって言ってたし、ちょっとだけ覗いてみようかな。
そう思って、閉じてあったスケッチブックを手に取ると、なんとなく、その真ん中ら辺をパッと開いてみた。