第2章 幸せのカタチ 不死川実弥
ーー身体が…崩れた…?
「大丈夫かァ?」
目の前の光景に唖然とする私に、誰かが声を掛けてきた。
「あ…はい……」
「怪我してねェか?」
その人は、腰が抜けてしまった私の前にしゃがみ込む。
わ…何か綺麗……
月の光に照らされた銀の髪がとっても綺麗だった。
今しがた襲われたばかりなのに、目の前の人に見惚れていると、「やっぱり頭でも打ったかァ?」と顔を覗き込まれる。
ちっ…近…!
男の人にこんな風に近づかれた事が無かった私は、びっくりして思わずのけぞり避けてしまった。
その人はハッとしてとても驚いていた。
「あのっ…ごごごごめんなさい!びっくりしちゃって…私、大丈夫なので!」
心配してくれたのに失礼な事しちゃったと申し訳なく思っていると、
「ッハハ!お前、そんだけ元気ありゃ大丈夫だなァ」
あ、笑った…
思ったより優しく笑うその顔に、なんだか少しどきっとした。
「ほら、立てるかァ?」
差し伸べられた大きな手に自分の手を重ねると、グイッと上に引っ張られる。が、
ーぺたん
すっかり腰が抜けてしまい、脚に力が入らなくなってしまった。
「ごめんなさ「しょうがねェなァ」
急に身体がふわっと宙に浮いた。
そう、私はこの人に横抱きにされたのだ。
「きゃあ!大丈夫です降ろしてください!多分その内歩けるので!」
「その内ィ?その間にまた鬼が来たらどうすんだよ。今度こそ喰われちまうぞォ」
「さっきの…やっぱり鬼だったんですね」
「…鬼ってのがいるっつーのは知ってたのか」
「噂程度ですけど…もう会いたくないです‼︎」
「だったら言うこと聞いとけェ」
よく知りもしない男の人と密着するのは恥ずかしいけれど、もうあんな思いは御免だ。
家まで送ってくれると言うので、家の場所を伝えると、「しっかり掴まってろォ」と言って私を抱き上げたまま歩き出した。
「あの、月城紗夜です」
「あァ?」
「名前、言ってなかったから」
「…不死川実弥だァ」
「不死川さん…」
なんだろうこの感じ……
不死川さんに触れている所が温かくて、初めて会った人なのに私はなんだかすごく安心した。