第2章 幸せのカタチ 不死川実弥
家の前に到着し、そっと降ろされる。
「ありがとうございました、本当に。何かお礼を…」
「礼はいらねェ。これが俺の仕事だからなァ」
「でもっやっぱり何かお礼させて下さい!」
「ア“ァ“ー!しつけェなお前も!」
え…そんなにしつこかったかな…若干打ちひしがれてると、不死川さんはバツの悪そうな顔をした。
「悪りィ、言い過ぎた……もう家入れェ」
不死川さんは私の頭をポンポンと撫でた。
荒い口調の割に優しく撫でるその大きな手に鼓動がトクンと跳ねた。
「もう行くからな。戸締まりしっかりしろよォ」
そう言うと、不死川さんは踵を返し歩き出してしまう。
ほんとに?帰っちゃうの?
どうしよう…このままじゃもう会えなくなっちゃう
何も返せないまま終わっちゃう…
そうだ!
「不死川さん!」
私は必死に不死川さんを呼び止めた。
すると、不死川さんは足を止めてこちらを振り向く。
「なんだァ?」
「私、三丁目の茶屋で働いてるんです!だから……よかったら食べに来てください!」
不死川さんは暫く考える素振りを見せると、フッと笑った。
「気が向いたらなァ」
そう言って手をヒラヒラ振り、今度こそ本当に行ってしまった。
「はい、待ってます」
ほんとにこれで会えるか分からないけれど、ほんの少しの希望を胸に、私は誰もいない家の中に入った。