第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
足にボールが当たったその人は、「何だぁ?」とボールを拾い上げ、どっから来たのかと周囲を見渡した。
「ぼくのボール!」
「お、なんだチビ、これお前のか。ほら」
「ありがとー!」
少し遅れて到着した私。
奏真はもうボールを受け取っていた。
ちゃんとお礼言えたかな?
私もちゃんと言っとかなきゃと思い、「ありがとうございました」とお礼の言葉を述べた。
奏真に目線を合わせていたその人は、私の声に反応して、すっと此方に視線を移動させた。
顔を上げたその人と目が合うと……
「あれ、…宇髄さん⁈」
ベンチで絵を描いていたその人は、昨日会った宇髄さんだった。
私を見て、一瞬びっくりしていたけれど、すぐにニカッと笑った。
「よぉ!また会ったな!」
「こんにちは!こんな所で会えるなんてびっくりです!」
「俺もビックリだわ。つーか俺はこっちのがド派手にビックリだけどなぁ…お前、ガキいたのか」
こっち、と宇髄さんは奏真を指差して言った。
「はい、息子の奏真です。奏真、ご挨拶して?」
「つきしろそうまです。5さいです」
奏真は自分の右手をぱーにして宇髄さんの前に突き出した。
「お前派手に賢いなぁ!」と宇髄さんは奏真の頭をわしゃわしゃと撫でまくる。
子ども好きなのかなぁ?
「俺の名前は宇髄天元様だ!しっかり覚えて帰れよ?」
「てんげん…さまぁ?」
「様…⁈お、お兄ちゃんにしとこうか⁈」
「てんげんおにいちゃん!」
「覚えたか?良し!」
「様付けでも俺は全然構わねぇけどな」なんて言ってはいたけれど、宇髄さんは満足気に笑った。