第6章 あなたの愛に包まれて*前編* 宇髄天元
「ママ、ねるまえにえほんよんで!」
「いいよ。どれにしようか?」
「これ!ももたろう!」
「うん、わかった。じゃあ、お布団入ってね」
「うん!」
私も一緒に布団に入り、奏真に寄り添うようにして絵本を広げる。
「準備出来た?じゃあ読むね。
昔むかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へせんたくに行きました。
おばあさんが川で「ねぇママー」
読んでる途中で奏真が突然話しかけてきた。
いつもは静かにお話を聞いているのに、どうしたんだろう。
「どうしたの?」
「“しばかり“ってなぁに?」
「しばかりって言うのはー………あれ?」
しばかりって“しば“を刈るんだよね?
“芝“?
山に芝はあるの?
………。
桃太郎のしばかりって、何だろう?
「ごめんね。ママも分からないや。今度お休みの日に図書館に調べに行こっか」
「うん、行くー!」
「そうしよー!じゃあ続き読むね。
おばあさんが川でせんたくをしていると、ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。……………
……………『おじいさん、おばあさん。ぼくは、今からわるい鬼を……」
ふと気付くと、隣からすー…っと気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。
起こさないようにそぉっと布団から抜け出し、布団をかけ直す。
子どもの寝顔は可愛いなぁ。
天使みたい。
この寝顔を見てたら、辛い事だって全部吹き飛んでしまう。
私は奏真がいてとても幸せだ。
けれど、奏真はどう思っているのかな。