第5章 守りたいもの 錆兎
蝶屋敷の玄関から外へ出ると、少し離れた所に、何やら話し込んでいる錆兎と村田さんの姿を発見した。
「あ、ほらいたいた。おーい、錆兎ー!」
真菰が呼び掛けると、気付いた錆兎がこちらを振り返る。
私がいる事に気がつくと、フッと目を細めて微笑んだ。
昨日も会ったのに、その笑顔を見ただけで私の鼓動がトクンと跳ねる。
「紗夜」
錆兎は私の名前を呼ぶと、その場で腕を大きく広げた。
え、その腕の広げ方…もしかして…いやここ外だし…
私が行くのを躊躇っていると…
「遠慮しないで、行っておいで?」
真菰が私の背中をそっと押した。
振り返ると、真菰はニコニコと、義勇も微笑んでいた。
「ありがと」
私はもう一度錆兎に向き直る。
錆兎は、腕を広げたままずっと待っててくれた。
「紗夜、来い!」
その言葉に、弾かれたように、私は駆け出す。
私をいつも守ってくれた、大好きな錆兎の腕の中に、思いっきり飛び込んだ。
「錆兎!」
飛び込んだ私をしっかりと受け止めて、ぎゅっと抱きしめた。
「錆兎大好きっ」
「俺も、大好きだ、紗夜」
人目も憚らず、私達はいつまでも、ぎゅうっときつく抱きしめ合っていた。
今までも、これからも
ずっとずっと、大好きだよ、錆兎。