第5章 守りたいもの 錆兎
軽い貧血と深い切り傷、少し輸血をして、右腕と右足は数針縫った。
花柱の胡蝶様に「抜糸が終わるまで我慢してね〜」と暫く蝶屋敷に入院するようにと言われた。
ーそして、抜糸の日
「はーい、出来たわよ。これで抜糸は済んだから、また定期的に様子見せに来てね」
「はい、ありがとうございます」
胡蝶様はにっこりと微笑んだ。
蝶屋敷にいる間、この花のような笑顔に何度癒された事か。
ーコンコン
「あらぁ、誰かしら?どうぞ〜」
ガラガラっと診察室の戸が開き、ひょこっと顔を覗かせたのは、真菰と義勇だった。
「紗夜〜、迎えに来たよ〜」
「真菰、義勇、ありがとう!」
真菰が先に部屋の中に入り、義勇が後からてちてちとついて来た。
あれ、二人だけ…?
部屋の外にいるのかなと、そっちの方を一生懸命見ようとする私を見て、真菰が可笑そうに笑った。
「あはは、ごめんね紗夜、今錆兎外にいるんだぁ」
「今村田と何か話をしていた」
「えっ⁈あ、だっ大丈夫!全然、気にしてないから!」
「うふふ、錆兎くん毎日紗夜ちゃんに会いに来てたものね〜」
「ちょっ、胡蝶様まで!」
私が入院中毎日会いに来る錆兎。
蝶屋敷では私達はちょっとした有名人になっていた。
あの二人は恋仲なのだと…
「そろそろ行こっか」と、真菰と義勇が胡蝶様にぺこっと会釈して先に部屋を出て行く。
私も最後に部屋を出ようとした時、「紗夜ちゃん」と呼び止められる。
どうしたのかと振り向くと、
「二人とも、とってもお似合いよ。錆兎くんと、お幸せにね」
そう言って、胡蝶様は、ふわりと花が咲いたような、優しい微笑みを向けてくれた。
「はい、ありがとうございます」
私も胡蝶様に釣られて、自然と頬が緩んだ。