第5章 守りたいもの 錆兎
あんなに動けなくなるまで頑張って、急いで呼びに行ってくれたんだね…
ありがとう
やっぱりなずなは、私の一番の相棒だよ
頭を撫でていた錆兎の手が、するりと滑り、私の頬に触れた。
頬に触れる錆兎の温もりが、心地良い…
「錆兎……あの…さっきの、なんだけど…」
「…あぁ、いいんだ、あれは…後でも。お前が良くなってからで」
「やだ……今言うから…聞いて?」
私の右頬に触れている錆兎の左手の上に、私の右手を重ねた。
私を見つめる青い瞳と視線がぶつかる。
「さっき…錆兎が、私の事……好きな女って言ってくれたの…嬉しかった…
私も好きだよ……錆兎の事」
錆兎は目を見開いて驚いて、その後…嬉しそうに、微笑んだ。
私も錆兎に釣られて頬が緩む。
思いが通じ合うって、こんなに嬉しいんだ…
なんとなく目を逸らしたくなくて、暫くの間、私達は見つめ合っていた。
「あの……………お取り込み中失礼しまっす!」
「うわぁっ⁈」
「!」
そこにいたのは担架を持った二人の女性の隠だった。
全然気が付かなかった!
錆兎も気が付かなかったらしく、目を丸くしていた。
いつからいたんだろう…
隠の人は黒い布で顔を覆ってるからハッキリとは見えないけれど、心なしか顔が赤い気がした。
もしかしてさっきの…聞かれてたんじゃ…
「そちらの方、蝶屋敷にお運び致します。よろしいですか?」
「はっはい!よろしくお願いします…」
と思ったけれど、特に今の状況について触れられる事なく…、と言うかきっと突っ込みづらくて敢えて何も言わないだけなんだろうけれど…、私は隠のお姉様方にテキパキと担架に乗せられた。