第5章 守りたいもの 錆兎
ーーー終わった、やっと……
張り詰めていた糸がプツリと切れたように、私はその場にバタリと倒れた。
「紗夜!」
錆兎が慌てて駆け寄って来た。
「クラクラする…貧血かなぁ…」
「そうかもな…血が止まらない…。紗夜、手拭い持ってるか?俺の分が今日は一枚しか無いんだ」
「隊服の…ポケットの中に…」
錆兎が私の隊服のポケットをごそごそ漁り、手拭いを探し出すと、それでまず傷のある腕にキツめに巻き付けていった。
錆兎に処置を施されながら、周りをぼんやり眺めていると、隠の人達が到着した。
隠達はテキパキと各々の仕事をこなしていく。
倒れていた隊士たちも、鬼が消えた事により針の影響が無くなったのか、隠の人に支えられて皆徐々に起き上がっていた。
心臓が止まったわけではなく、全身麻痺で動けなくなっていただけのようだ。
倒れていた村田さんも、もう動けるようになっており、大丈夫だとこちらに手を振ってくれた。
私も大丈夫と手を振り返した。
「皆生きてるね…良かった…」
「あぁ、次足の方巻くぞ」
今度は錆兎の持っている手拭いで、足の方を巻いていく。
キツめにきゅっと結ばれると、傷口が圧迫されて身体に痛みが走った。
「…ゔっ…」
「っごめん…痛かったな」
「ううん…錆兎の方が痛そうな顔してる」
「……」
錆兎は、私の頭をそっと撫でた。
そっと、優しく、労わるように…
「もっと、早く来れたら良かった…」
「…でも…急いで来てくれたんでしょ?」
いつもは、戦闘後も涼しい顔してるのに、今日は薄ら汗をかいていた。
「俺は今日、遠方で任務だったんだが…お前の鴉が俺の事呼びに来たんだ」
「え…なずなが…?」
錆兎が指差す先に、疲労困憊のなずなを労わるように寄り添う龍若丸がいた。