第5章 守りたいもの 錆兎
ーータタタッ……ザンッ…!
ーーー………あ…れ……
来るはずの衝撃も、痛みも…何も来ない…
ハッとして目を開けたら、そこにいたのは……
「すまない、遅くなった」
「…っ錆兎……!」
来てくれた……錆兎が……
あの時と同じように……
『…ぐっ……このっ……!』
私を殺そうとした鬼の両腕は無くなっていた。
錆兎は私を背に隠して鬼と対峙する。
目の前にある逞しい錆兎の背中に目頭が熱くなって……
でもダメだ
ここで泣いてたら、3年前と何も変わらない
痛みなら我慢すればいい
大丈夫、戦える…
チャキ…っと、私は日輪刀を構え直した。
一瞬振り返った錆兎が、私を見てギョッとした。
「紗夜っ、何してるんだ!」
「私も戦う…!」
「ダメだ!お前は動けないだろう!ちゃんとここで大人しくしていろ!」
「守られてるばかりじゃ嫌だよ!それに私大丈夫っ…まだ戦えるから…!」
どうしても戦いたい私に、錆兎が有らん限りの大声で、叫んだ。
「好きな女くらい守らせろ‼︎」
私は息を呑んだ。
錆兎が、私を…⁈
こんな戦闘真っ只中の錆兎の大告白に、あんた何言っちゃってんの⁈と突っ込んでしまいそうだったけれど、それ以上に……
嬉しさの方が勝ってしまって、私の顔がどんどん熱くなっていた。
私達の側で倒れたまま一部始終を見ていた村田さんは、すごい顔だった。
きっと私以上だろう。
まるで茹蛸のように、その顔は真っ赤になっていた。