第5章 守りたいもの 錆兎
この山全体の広さは分からないけれど、中程までは来たのではないかと思う。
「居ナイワネ」
「うん………待って」
耳を澄ませてみると…
ーーーカンッカンッ
何か金属っぽい音が微かに聞こえてきた。
「向こうだ…いる!なずな、ここまでありがとう!行ってくるね!」
「エエ、ガンバッテ!」
なずなは私の肩から離れ、上空に飛んで行った。
私は急いで音のする方へ向かった。
ーいた!あそこだ!
駆け付けてみると、そこには数名の隊士が倒れており、一人の隊士が鬼と戦っていた。
鬼の鋭い爪が、戦闘中の隊士に向かってビュッと伸びていく。
危ない!
ーダダダッ…ザンッ…
襲い掛かる爪をズバッと切ると、戦闘中の隊士から少し離れた所で日輪刀を構える。
「月城か⁈」
「村田さん!」
戦闘中の隊士、それは、私達の同期の村田さんだった。
「月城、気を付けろ!この鬼は今みたいに右手の爪が伸びるのと、左手の指先から妙な針を出すんだ!手足に刺さるだけなら麻痺だけで済む!身体に刺さると心臓が止まるんだ!」
異能の鬼…
それでさっきからカンカンと音がしているのか…
村田さんは、鬼の指先から出る針を日輪刀で弾いているんだ。
そして、今倒れている人達は……
許せない
私は日輪刀をぐっと固く握り締めた。
『ふん、鬼狩りが何人来たって一緒さ。私がみーんな殺してやるよ』
目の前の女の鬼が薄ら笑いを浮かべる。
村田さんは、今あの針を弾くので精一杯だ。
私が前に行かないと!
すると、また急にビュッと鬼の鋭い爪が伸びて来た。
針が村田さんの方へ向いている間に何とかして鬼の頸を…!
切っても切っても伸びる爪を切りながら私は鬼へ向かって走った。
ーザンッ!
『ぐっ…!』
鬼の右腕を切った…今だ!
「水の呼吸 壱ノ型 水面ぎ『そうはさせないよ!』
村田さんに向けられていた針の出る指先が突然私に向けられた。
こんな至近距離ではまずい!
「参ノ型 流流舞!」
直前で型を変え、針を弾きながら一度後方へ下がった。