第5章 守りたいもの 錆兎
目的地の山の麓へ到着する。
確かに鬼の気配はする。
けれど、周辺から物音が何も聞こえない。
きっと、もっと奥だ……
「サァ、紗夜!行ッテ!」
「うっ…うん…」
目の前の山は、この間錆兎と行った雑木林の様に、不気味だった。
陽が入らないから、少し先の景色も良く見えないし……やっぱり出そう、見えてはいけないものが。
中々足が進まない私に、なずながいつものように言った。
「全ク、ショウガナイワネ!」
そして、いつものように私の肩に乗る。
うん、心強い。
「ありがと、なずな」
「お安イ御用ヨ」
なずなを肩に乗せて、私は歩き出した。
あの日以来、こういう所に来ると、手を引いて歩いてくれた錆兎を思い出す。
暫く会ってない。
今日は、別の所で任務かな。
少し…錆兎が恋しくなった……