第5章 守りたいもの 錆兎
「おい義勇」
「なんだ」
「ちょっと、デコ出してみろ」
「?」
義勇は訳が分からんと訝しげな顔をしたが、素直に前髪をぺっと上げ、デコを出した。
俺は出された義勇のデコに自分の手のひらをペタッと乗せる。
「……熱はないな」
「何の真似だ」
「いや、義勇がおかしな事を言うから熱でもあんのかと…」
「……!」
義勇は「心外!」とでも言いたげな、何とも言えない変な顔をしていた。
そうか、そうだよな。
俺だってそうだし、義勇ももう18だ。
そろそろそういう事も分かってくる年頃だろう。
いつまでも泣き虫義勇な訳ないよな。
分かってんなら、もう隠してても仕方ないか…
「義勇、合ってるよ。……俺は、紗夜が好きだ。
さっきは、お前が触ろうとしてるのがやだったし……取られたくないと思ったんだよ」
言いながら、我ながら女々しいと思った。
こんなの、俺らしくない。
「俺は、紗夜の事は、妹くらいにしか見えない。だから、俺に嫉妬する必要はない」
「ん、分かった。ごめん」
妹か…
俺は、初めから、妹だと思ってみた事はなかった。
気付いたら俺の後ろをいつもちょこちょことついて来て
危なっかしくて、目が離せなくて
笑顔の可愛い女の子だった…
「言わないのか?紗夜に」
「いや、いつか言う」
このままにしておくつもりはない。
いつか言える時が来たら、言うつもりだ。
どういう結果になったとしても、受け入れる。
「錆兎、俺は、応援する」
「義勇…」
「俺は、紗夜と錆兎がそうなってくれたら、嬉しい。
真菰もきっと、そう思うんじゃないかと思う」
義勇がそう言ってくれて、俺はとてつも無く嬉しかった。
やっぱりお前は、俺の一番の親友だな…
「義勇、ありがとう」
「あぁ、頑張れ錆兎」
義勇はそう言って笑った。
俺も義勇の笑顔に釣られ、笑った。