第1章 貴方は誰?
『信じられない…』
私は思わずそう口にする。
要は自室の扉を開くと何故かここにいた、と。
そんな馬鹿な話があるか。
「俺も信じられねぇよい。
だが事実だ。」
マルコさんは真剣な顔つきでそう言う。
『じ、じゃあ、仮にそれが本当だとして…
帰り方は?』
「その帰り方が分からなくて困ってるんだよい。」
『えっと、住所とか、分かります?
飛行機とか使ったらどうにか帰れるとは思いますが、、、』
イマイチ扉を開けたらここにいたっていうのは信じられないが、今の問題はそこじゃない。
原因なんかじゃなくて、この人が帰ることが一番の目的なのだ。
「住所ってのは住んでる場所のことかい?」
『えぇ、勿論…』
「…それは分からねぇよい。
俺は海賊なんだ。決まった場所にいることなんてほとんどない。」
『…』
確かに、さっきから海賊だの海軍だの海にまつわる言葉を耳にする。
本気でこの人が海賊なら住所なんて存在しない上、この人の故郷は日本ですらない。
それだと本当に帰る手立てが無い。
私がどうしようか頭を悩ませていると、マルコさんが口を開いた。
「…さっきから少しだけ考えていたんだが、、、」
その言葉にマルコさんの目を見ると、自分でも自信なさげというか、信じられないというような微妙な表情。
私は黙って続きの言葉を待った。
「この世界は俺の知っている世界ではないんじゃねぇかと思うんだが、、」
『え?』
思わぬ発言に、私は再び言葉を失った。
正直、この人は頭がおかしいのではないかとも思ってしまう。