第1章 貴方は誰?
ポカンとしている私にマルコさんは続ける。
「俺のいた所では、グランドラインと呼ばれる海があって、沢山の海賊たちがワンピースという宝を目指して航路を進んでいたんだよい。
だから海賊なんて別に珍しいモンでもねぇ。
…さっきからのお前の反応を見る限り、ココでは海賊なんていねぇんだろう?」
マルコさんはそう言って私の顔を覗き込む。
『はい…海賊なんて、、、ゼロでは無いですけど、限られた地域にしかいないと聞きますし、グランドラインという海は聞いたことがない…』
「それに、俺のほうもニホンという国は聞いたことが無い。
ケイサツ、ってやつもな。」
…確かに、世界線が違えばこのかみ合わない感じも説明がつく。
でも、、、そんなことってあり得るのだろうか。
私は様子をうかがうようにマルコさんの顔を盗み見た。
眉間にしわを寄せ、真剣に考えるその姿は、この人が本当に困っていることを感じさせた。
私もしばらく考えてみたがいくら頭をひねっても、身一つでやってきて常識も知らなくて、しかもこんな夜にできることは何もなさそうだ。
そして、私の疲労が限界に達した。
『…マルコさん、もう夜も遅いですし、今いくら考えたところでどうにもならないので、、、今日はもう寝ましょう。
部屋も布団も余ってるの貸すので…正直私もう限界で、、、』
私がそう言うと、マルコさんは驚いたような顔をして言った。
「俺がここにいていいのかよい。」
『良いも何も…こんな時間終電も無いですしこの辺りホテルも無いからどうしようも無いです。』
あぁ、だめだ。頭が働かない。
『もう、難しいことは明日考えましょう。』
私はそう言うが早いか、隣の客間に布団を敷いてマルコさんに一言言うと、自室のベッドに飛び込んだ。
体も頭も限界で、私の意識は一瞬で遠のいていった。