第1章 貴方は誰?
今日は久々の戦闘があった。
とは言っても、若くて血の気の多いエースが入ってからというもの、アイツがいつも大半を倒しちまうから楽なもんだ。
「マルコ!さっきの見てたか!?」
「あぁ見てた見てた。
相変わらず雑なスタイルだよい。」
「なんだと!早くて良いだろ!!」
「よいよい。」
キーキー言ってるエースを遇らいながら戦利品の整理をする。
小せぇ海賊の割にはそこそこ溜め込んでた。
俺はそのリストを手に自室の扉を開く。
「?」
ここでやめておけばよかったんだ。
ここで引き返しておけば、あんなことにはならなかった。
…扉を開けるとそこにはいつもの自室はなく、ぐにゃりと歪んだ灰色の空間。
さっきの奴らの能力か。
そう思って中にいる奴を倒すつもりで足を踏み入れた。
警戒を怠らず、青い炎をチラつかせながらゆっくりと足を進める。
「は、」
急に視界が開けたと思えば、見覚えのない部屋。
思わず後ろを振り向くとそこには部屋が続いているだけで、俺の部屋の扉も先程のモヤも何もなかった。
どういうことだ。
とりあえず窓の外を見ると、海なんて見えなくて、地面が全く揺れていないからそもそも船の上ですらない。
その上さっきまでは昼間だったのに今は夜だ。
本当に訳が分からない。
一先ずこの部屋の中に人の気配はない。
まずは状況を把握しようと適当に部屋を歩いていると、
『ただいま…』
小さな声だが、随分と疲れ切った女の声が聞こえた。