第1章 貴方は誰?
「…警察ってのは、海軍の仲間かなんかかい?」
『は?』
海軍?
海上自衛隊のこと?
『何を言って…』
混乱が混乱を呼び、頭の中がおかしくなりそうだ。
手首をはじめとする体の痛みがさらに私を焦らせる。
「…お前、白ひげ海賊団ってのは聞いたことはあるか?」
『無い。』
…大体海賊なんて、本当に何を言ってるのだろう?
顔を見ることも叶わない相手。
私が今最大級に疲れて頭が働かないことを差し引いても、、、この人、どう考えても正常じゃない
「…少し、話を聞く必要がありそうだねぃ、、、」
少しその人は考える素振りを見せると、一つ呟き私を押さえる力を緩めた。
っ!今だ!!
その機会を逃さぬように、震える足を叱咤して玄関へと走る。
先ほどの件もあるし、この人と同じ場所にいるのは危険だ。
「逃がさねぇよい」
『っ!』
あっという間に腕を捕まれた。
どうにか振りほどこうと藻掻くが、その手が離れることは無い。
『離して!!』
「そういうわけにもいかねぇ。
お前には聞きたいことが山ほどあるんだよい。」
そう言うと、私の手をつかんだままズルズルとリビングへ連れられ、テーブルを挟んで座らされる。
そこで私はようやくこの人の顔を見た。
あり得ないほどの長身
眠たげに細められた目
肌は日焼けしてように少し黒くて、ガバリと開けられたシャツから覗く体は彫刻のように均整が取れている
そして一際目を引くのはそこに大きく掘られているタトゥー
見たことのないような風貌の彼はまるで本の中の住人のようで、それほど現代の格好とはかけ離れたものだった。
私はこの人が目の前にいるうちは下手なことはできないと考え、次のチャンスまでじっとしていることに決めた。