第1章 貴方は誰?
…疲れた。
大学からの帰り道、私の頭を占めているのはその一言に尽きる。
今日は午前は講義、午後は研究、夕方からはアルバイト、、、
私の時間割的に金曜が1番忙しいのだ。
明日は土曜、朝は好きなだけ寝て、この疲れを癒すとしよう。
今日は一刻も早くシャワーを浴びてベッドに身を投げたい、
ガチャ
家の鍵を開けて、誰もいない部屋にぽつりとただいま、と声をかける。
鍵をしっかり掛けて、靴を脱ぎ、いつものようにリビングのドアを開ける。
ダン!!!
『うっ!』
痛、、、
「オイ、簡潔に答えろ。
お前は誰だ。」
誰?
何?
そんな考えが頭を巡るよりも早く、私を床に倒して押さえつけている誰かは首筋に冷たいものを押し当てた。
「答えろ。」
…これが本能というものなのだろうか、首元に当てられているものが何かは見えない。
しかしそれでも、少し選択を間違えば命はない。
それだけがはっきりとわかり、喉から息がヒュッと漏れる。
私は震える声で答えた。
『…七黒、さくら、、、』
「…次だ、さくら。
ここはどこだ。」
『私の、家、、、です…』
どこだ、というのがまた漠然とした質問だからか、国の名前が県の名前か、はたまた町の名前か、どれを言うべきかわからないまま、そんなことが口から出ていた。
と、私を押さえつけている力が少しだけ弱まったのと、相手が黙ったことで私も少し冷静になれたので思い切って口を開く。
『あ、あなたこそ!貴方こそ誰ですか!
勝手に人の家に入って、、、不法侵入で警察呼びますよ!!』
まぁ、両手を抑えられて床に伏せている状態ではそんなこともできないのだが、、、
心臓が激しく波打つのを止められないまま、精一杯の強がりを言う。
しかし、すごい力で押さえつけてくるこの人は、さらに予想だにしないことを口走った。