第2章 新生活
持ってきた物がそれだけなら、身分証もないし、、、銃を持ち歩こうとするほどの人だ。
まともに生活できるとも思えない。
『マルコさん。』
「なんだよい。」
『戻れるアテが見つかるまで、ここに住みますか?』
そう言うと、マルコさんは驚いたように目を見開く。
「…それは、、、俺は本当に助かるが、、
…いいのかよい。」
『構いませんよ。
この家には私一人ですし、部屋も布団も余ってますから。』
「いや、、、俺は海賊だよい。
それに、初めはお前を殺そうとした男だ。
…こんな得体の知れない男と住むのは嫌だろう。」
マルコさんはそう言って下を向く。
その姿は迷子の子供のようで、初対面の怖さが嘘のようだった。
『確かに、出会い頭からナイフ突きつけるのはどうかと思いますが、突然知らない世界に来たのなら多少は気が動転するでしょう。
それに、、、はっきり言って、仮に貴方をこのまま放り出したとして、貴方がこの世界でまともに生活できるとは思えません。』
警察に通報されるのがオチだ。
そう言うと、自分でも自信がなかったのか、何も言わずにただ耳を傾ける。
まぁ、それ以外にも懸念点は多々あるが、、、
『…何か理由がほしいなら、そうですね、、、
私にはこの家は広すぎる。
とでもいっておきましょうか?』
私はまっすぐにマルコさんの綺麗な瞳を見つめる。
変な人だし危ない人だけど、無闇に人を傷つけたりする様な人には見えない。
それに、
帰る場所がない人を放り出すような真似をしたら、私の大好きな人達に怒られちゃう。
彼等に恥じるような生き方だけは絶対にしたくない。
「…そこまで言ってくれるのなら、言葉に甘えさせてもらうよい。
これからしばらく世話になる……さくら。」
『はい。』
こうして私たちの共同生活の幕が開けた。