第10章 初遠征
清光side
最近、主が「私には霊力がない…!」ってよく嘆いてる
確かに他の本丸のベテラン審神者と比べると霊力は劣る
俺らの主は審神者になってまだ日が浅いし、これから霊力を高めていけばいいんじゃない?って思ってるけど、悩んでる主を見ていると、俺らに何か出来ないかって考えちゃうよね
「そ、こ、で!」
バン、と机を叩いた俺は、この部屋に集まった面々へ視線を向ける
「次の遠征、主と共に行って欲しい。」
招集されたうちの一振、薬研が口を開く
「主と共に…つったって、うちの主は自身を任務先の時代に飛ばしたことがないだろう。大丈夫なのか?」
清光からの唐突な提案に薬研は不安げな表情を浮かべる
「主の今の霊力では、刀剣男士と主自身を転移させるには十分とは言えませんね…。」
薬研の隣に座る一期も、そう言うと表情を曇らせる
「今の状況では、霊力が少ないからって極力使わないようにしてるでしょ? それじゃあいつまで経っても霊力の上限は上がらないし…、いつもより霊力を使ってみるのもありじゃないって話ね。」
「はっはっは。荒療治だが、なかなかに面白そうだな。」
先程まで茶を飲んでいた三日月が笑みを浮かべて口を開く
「次の遠征先は俺も行ったことがある。難易度もそれほど高くない。部隊に選ばれたのが三日月宗近、一期一振、薬研藤四郎なら、主を任せられると思ってる。主の悩みを解消したいんだよね…。」
俺は選ばれてないし、今は近侍で第1部隊長だから…
自らが出陣できない事には少し不満だ
だから、次の遠征に選ばれている第2部隊の、この三振りに掛け合っているのだ
「俺も主の悩みなら、解決してやりたい。ちと主に掛け合ってみるか。」
「私もそう思う。多少心配ではありますが、この部隊であれば主をサポート出来るでしょう。」
「うむ。最近は畑仕事ばかりで体が訛っておったからな、神力なら有り余っているぞ。任せてくれ、加州。」
三振りの回答に、胸を撫で下ろす
「大切な主を、頼んだよ。」
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その後、遠征部隊は事の経緯を主へ伝え
この試みは実行する流れとなった
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