第10章 初遠征
「はい、主は心配性だねぇ」
そう言うと髭切は主の手元から大きな鞄を奪う
「あ!私の鞄!髭切〜、返して!」
「はいはい、主はあの鞄じゃなくて、こっちね」
返してと髭切に詰め寄り手を伸ばす主の腕を引いて、手のひらに小さなお守りを握らせる
「…? これは?」
自分の手に収まる程の小さなお守り、刀剣男士に持たせるものとは少し違い、全体が桃色で白いリボンが付いている
「それは主専用のお守り。こんのすけから預かった霊力補助の御札が中に入ってるよ。側は俺の手作りってね。どう?可愛いでしょ?」
わぁ〜とお守りを見つめて目をキラキラさせる主を見ると、作った甲斐があったと感じる
「遠征先で霊力が尽きたら帰って来れなくなるかもしれないからね、そのお守りは絶対に肌身離さず持ってて!…じゃあそろそろ時間だし、行ってらっしゃいー!」
そのまま手を引かれ転送ゲートの前までやってくると、既に身支度を整えた第2部隊が控えていた
機械的な起動音と共に光を帯びた扉が姿を表す
「主の事は私達がお守りします、安心してください。」
「大将、準備はいいか?」
「あ、鞄…」
お守りに気を取られて忘れていたが、お出かけセットが髭切に取られたままだ
辺りを見回すと少し離れたところで髭切が鞄を片手で持ち上げながら、僕が預かっておくよ、と満面の笑みを浮かべながら空いた方の手を振っている
「では、参ろうか。」
三日月に背中を押されて、光の中へ足を進める
姿が光にのまれる直前に
「行ってきます」
と、この本丸の若き主の声が響く
「行ってらっしゃい。…無事に帰ってきてよね。」
俺は髭切と共に第2部隊と主を見送った