第9章 雨のひと時
羽織と裁縫道具を手繰り寄せて、途中まで縫った箇所から再開する
「そうだったんですね。 …へぇ、主さん、手先が器用なんですね!」
堀川はずいっと身を乗り出して、縫われていく羽織を見やる
「そんな対したものじゃないけど、少し直すくらいなら、ね!」
僕よりずっと丁寧だ、と頭を掻きながら堀川は笑う
「でも時々、危なっかしい所もあるよなぁ?」
含みを持たせたように話すと、ニヤリと笑う兼定
うぅ、何も返せない…!
悪い顔をする兼定に言い返せずに遣り込められる
堀川は私と兼定の顔を交互に見て、頭上に?を浮かべる
程なく縫い終わり
出来たっ!と羽織を広げれば
解けていた所は分からない程、元に戻っていた
「さすが主だな!助かるぜっ!」
兼定は早速、羽織に袖を通してくるりと一周回って見せる
何度も振り向き羽織を見ている様子を見ると、随分と機嫌が良さそうだ
羽織を纏うとスイッチが入ったように戦闘服感が増すというか、キマるというか
我が本丸の兼定は格好良いなと改めて思う
「わぁ!兼さん、格好いいよ!」
隣で堀川も目を輝かせて兼定を見ている
堀川も私も兼定に見惚れていると、後ろから足音が近付いてきた