第9章 雨のひと時
やらかしたー…と、周囲を見渡しちり紙を探す
「…っと、大丈夫か主。手ぇ貸してみな。」
兼定は私の手を掴むとそのまま自分の口元へ引き寄せる
「唾つけときゃあ治る! 」
小さく口を開けたかと思うと次の瞬間、ぱくりと指の先端を口へ含んだ
「…あっ、」
一瞬の出来事に、状況の整理ができず反応も出来ない、されるがままである
兼定の舌が指先を掠めてちゅうっと緩く吸われると、思わず身体が熱くなるような、変な感覚に襲われビクンと小さく肩が跳ねる
兼定が目を伏せると長い睫毛も揺れる
私の方に身を傾けている為、兼定の長い髪がひと房顔に垂れる
心臓がドクドク煩い
血が巡って顔が熱くなっているのが分かる
こんなにも近い距離で兼定を見たこと無かったけど、瞳も肌も凄く綺麗だし、髪もサラサラだな…
格好いい刀って言うだけある、本当綺麗で格好いい…
驚きと恥ずかしさに染まった中でも、思わず兼定に見惚れてしまう
兼定がその髪を耳に掛けた時、視線が上がり目が合う
「「…!」」
その瞬間、兼定の頬もみるみる朱に染まる
チュッと小さいリップ音と共に兼定の唇が離れ、手も開放される
「ばっ、…主、顔真っ赤だぞ…!」
「だって、兼定がっ…」
「俺はただ、咄嗟に止血をしただけだ!」
ぷいっと腕を組んでそっぽを向いてしまった兼定
顔は見えないが、まだ耳が赤いのが分かる
「兼定も顔赤いよ?」
「これはっ、あんたが照れるから──」
小競り合いが起きそうになった時、縁側をこちらに向かって歩く足音が耳に入った