第9章 雨のひと時
ふと兼定の手元を見るとだんだらの羽織をくるりと丸めて抱えている
「解けてるって、どのくらい?ちょっと見せて。」
兼定から羽織を受け取ると、広げて全体を確認する
確かこの辺…と、兼定も羽織を手繰って解けた箇所を探してくれている
「…ここだ! この裾のところが解けちまってよ。」
見ると、何処かに引っ掛けでもしたのだろう、羽織の裾が少し解けていた
今まで自分の服も直したことあるし、ある程度の裁縫なら問題なくできるし…!
「おっけー!この位なら私、直せるよ!」
ちょっと貸してね、と羽織を抱えると執務室の棚を漁り、裁縫道具の入った箱を取り出す
「本当か! 主、執務で忙しい時に、すまねぇな…。」
裁縫箱を持って座った私の傍に、珍しくしおらしくなっている兼定も腰を降ろす
ここをこうして─────
スイスイと縫い進める私の手元を、感心したように目を見開いて見つめる兼定
そんなにじっと見られると、緊張するなぁ…
─────チクッ
「───あ、痛っ。」
つい手先が狂い、人差し指を針で刺してしまった
人差し指の先端からは小さくぷくりと血が滲んでいる