第9章 雨のひと時
彼は脇差とは言え立派な刀剣男士、可愛いからと侮ってはならないと心の中で悟った
障子を開けたまま飛び出して行った堀川、外は明るいがまだ降り続いている雨の所為で、湿った空気が室内に流れ込む
開いた障子の側まで行き、外を眺めると、庭の草木が露に濡れて青々としている
太陽の光を反射した露は輝いて、とても綺麗だ
思わずその景色に見惚れていると、縁側を歩く足音が近付いてきた
「───主、国広はいねぇか? 確か今、近侍だと思ってよ。」
ふと顔を上げると、兼定が堀川を探して執務室を訪れていた
「あ、兼定! 堀川なら今お茶を準備してくれてる所だよ。もう少しで戻ってくると思う。」
そうか…、と縁側の先に視線を向ける兼定
「なにか用事でもあった?」
どこか難しそうな顔をしている兼定を見かねて訊ねると、頬をカリカリと掻きながら、実は… と兼定が続ける
「戦闘服の羽織が解けちまってな。直そうと思ったんだが、俺は裁縫なんざやった事がねぇからな…。」
「それで堀川を探してたって事ね。」
そう言うことだ、と少しバツが悪そうにしながら兼定が答える