第9章 雨のひと時
「…?」
首を傾げて頭上に?マークを浮かべる堀川に向かって、私は大きく手を広げる
「はい、堀川!おいで!」
まさか私から言われるとは思っていなかったのだろう、堀川は戸惑ったような表情を浮かべたが、すぐに笑顔へと変わり、両手を広げて抱き着いてきた
「──主さんっ!」
堀川の内番服のジャージからはふわりと洗剤の良い香りがする
私はすりすりと首元に顔を埋める堀川の頭を優しく撫でる
「最近、堀川とゆっくり過ごせてなかったよね。ごめんね。」
「いえ、出陣や遠征に関わる執務も多く、主さんが忙しい事は分かっています。どうか謝らないでください。」
顔を上げた堀川にまっすぐ見つめられる
射抜くような視線に身動きが取れず固まっていると、ふと肩を掴まれる
そして堀川は少し屈んでゆっくりと顔を近付けると、私の唇にキスを落とした
「…んっ!」
一瞬で顔に熱が集まるのが分かり心臓が跳ねる
突然の事に思考が追いつかない
「これで、帳消しにさせてもらいますね!」
そう言うと悪戯っぽく微笑む堀川
完全に油断してた…
堀川がまさかこんなに積極的だったとは───
「ちょっと、堀川」
声を掛けようとしたが、お茶を淹れてきます!と足早に部屋を去ってしまった為、私はただその場に立ち尽くす…
去り際、堀川の耳も真っ赤に染まっている所が見えたので、これでお相子だ…、と自分を言い宥める
可愛いと思っていた矢先、積極的な堀川にドキッとしてしまったのは計算外だ