第9章 雨のひと時
「…恥ずかしいけど、でも…嬉しいです。」
執筆机の側まで来ると、後ろからぎゅっと抱きついてくる堀川
「っ…!堀川…?いきなりどうしたの!?」
「すみません。嬉しくなって、つい…。」
突然の事に反射的に振り返ろうとするが、机に向かった状態で後ろから抱きつかれているため、思うように身動きが取れない
「ん…、たまには、主さんに…甘えたくて…。」
ダメ、ですか?と辿々しく言葉を紡ぐ堀川
表情は見えないが、ちらりと堀川を見やると、耳が少し朱に染まっている
甘えてくる堀川…、
可愛い…可愛すぎる…!
普段は兼さん一筋でしっかり者の堀川が、珍しい
そういえば、出陣や遠征も重なって、最近はまともに会話も出来ていなかったな…
思い返せば堀川との時間を作れていなかったことに気付き、自省する
これも堀川なりの意思表示なのかな?
素直に甘えてくれるのはこちらとしても嬉しい
ポンポン 、と後ろに手を伸ばして堀川の肩を叩くと、気付いた堀川は抱きつく力を弱める
その隙に私は執務机から立ち上がり、堀川に向き直る
改めて立って並ぶと、思ったよりも堀川の身長が高いことに気付く
私は少し見上げるようにして堀川を見つめる