第2章 本丸
三日月side
主は変わっている。
我々は顕現され人の体を得ているが、刀剣。
───物である。
生み出されてから長い時が経ち
数々の主の元で刀剣としてその使命を全うしてきたが
所詮、物であるのは変わらない。
刀として、武器として、扱われてきた。
しかし、今の主は違う。
我々を、刀として扱うのではなく
1つの命として、仲間として、接するのだ。
刀であるから戦い、
盾となり鉾となり、
歴史を守る事に徹する。
ときには傷を負うこともあるが、手入れすれば治る。
今の主と過ごすようになってから
そのような定められた道から解き放たれるような…
そんな変な感覚に陥る。
刀である本分を忘れ
対等な立場で愛されたい…
なんて、心のどこかで思ってしまっているのかもしれない。
「こんなことも、あるのだな…。」
そう小さく呟いたが
横で茶を一気に飲み干そうと湯呑を擡げている主の耳には届かなかった