第8章 騒がしい夜更け
主の所為かと問われれば、別の意味で主の所為なのだが…
方向性が違う事については声を大にしては言えまい
心に渦巻く邪念を濁すようにゴホンと咳払いをする
「主は何も悪くないですよ。謝らないでください。」
そう声を掛けても、しょんぼりと俯いたまま首を振り、頑なに顔をあげようとしない
───主、あなたってお人は
傍にいる主の手を取り引き寄せ、そっと抱き締める
表情は見えないが、突然の事できっと驚いた顔をしているのだろう
「主、そんなに気を落とさないでください。こうして主を驚かせる事が出来るくらい、俺は回復してますよ。」
抱き締めながら耳元で囁くと、緊張しているのか、身体に力が入っているのが分かる
暗い顔の主を見た途端、心より先に身体が動いてしまった
主命でもない、後先を考えない行動に自分でも驚く
体を離すと、耳まで真っ赤な主の姿が目に入る
「もう、いきなりだから…びっくりしたよ…!」
もう、とご立腹な様子の主
照れているのだろうか、それを隠すようにあたふたと話す主は何とも愛らしい